スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

徒然読書録 『荒川洋治詩集』 ~ことばのちから

ある友人から変わったものをいただきました。

『荒川洋治詩集』

詩集。

あまりの馴染みのなさにびっくりしましたが、
読み終わってみれば、すごくいい経験でした。





冒頭からはっきり書いてしまえば、
「この詩がいいのかどうか、さっぱりわからねえ!」と叫びます。
ええ、自信を持って断言します。
モダニズム、自身を否定しながら愛する、ポスト現代。
歴史の知識もなければ、芸術のたしなみも皆無。
解説を読んでも、そんなことは知ったこっちゃない。

それでも、そんな私でさえ少しはわかります。
この詩の中に確かに感じる「ことば」の力を。
例えば、『見附のみどり』という詩の一片。


夢をみればまた隠れあうこともできるが妹よ
江戸はさきごろおわったのだ
あれからのわたしは
遠く
ずいぶんと来た

いまわたしは、埼玉銀行新宿支店の白金のひかりをついてあるいている。ビルの破音。消えやすいその飛沫。口語の時代はさむい。葉陰のあのぬくもりを尾けてひとたび、打ちいでてみようか見附に。



これを読んだときはぶっ飛びました。
それまでのふわふわした雰囲気から、
急に現実へぐいと襟元を引っ張られる感覚。
「口語の時代はさむい」というワードも有名らしいですが、
私はとにかくこのギャップにやられました。
同時に、言葉から想像される意味ではなく、
「ことば」そのものの力を感じたのです。

「江戸」と「埼玉銀行新宿支店」。ノスタルジーな単語と現代の単語。
少ない文字で作る行節と、改行がなくなる節。
句読点がない節と、句読点がある節。

オーバーに言えば、文の意味なんかわからなくても、
このギャップを感じられる、それが私の言う「ことば」の力。
私が感じられるものでこれなのだから、
まだまだ数多くの技法があるはずです、この詩集には。

これを読み終えて、我が身を振り返ると、
まあ、なんて雑に言葉を扱っているんだろう。
ひと単語ひと単語に精神を削って小説を書いているんだろうか、私。
この記事を悠々コーヒー飲みながら書いている場合じゃないぞ。

でも、とそこで少し考えるのです。
小説を書くのはそういう、ことばの世界での戦いとは
ちょっと違うのではないかと。

乱暴なたとえで、言葉を武器として考えるなら、
小説はその武器を使って何かを成し遂げるもの、
一方、詩は武器そのものの形やあり方を考えるように思います。
そもそも言葉との向き合い方が違うどころか、言葉の扱い方が違うのです。

詩のあり方は、美術のあり方にも似ていませんか。
特に現代美術は「描くこと」そのものに疑問を投げかけた。
それでいながら「描くこと」をやめるわけではない。
詩も同じように「ことば」そのものに問いかけながら、
書くことを決してやめるわけではない。

だから、小説を書くことが言葉に対して失礼だとか、
そういった話でないように思います。
それでも、詩に触れることで、自分の使っている武器を
より愛せるようになるのだと思うのです。
ことばの持つ力をもう一度信じることができるのだと。

まあ、私が詩に対してどうこう言える立場じゃあないんですけれど、
時折こうして詩に触れて、ことばの面白さを見直したいなと、
この詩集を読んでそんなことを思ったのでした。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

蛮天丸

Author:蛮天丸
物書き。
東方プロジェクトの二次創作小説を中心に、
好きなものを好きなように書いています。
最近は秘封がお好き。
秘封処女膜合同の主犯(siroito.web.fc2.com/maidenhead/)だけど、処女じゃないよ!
アイコンは一条さんからお借りしました。

ジャンル

東方 読書録 映画録 漫画録 ゲーム録 アニメ録 ドラマ録 艦これ 

RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。