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徒然映画録 『聲の形』 ~ それはこころのかたち

「聲の形」観に行ってきました。
ほんの二時間前に観終わったばかりです。
でも、あまりに色々なことがどどっと押し寄せてきて、
公開後二日だというのにここに書かずにはいられない。

明日も仕事ですが、そんなこと関係ない! 
この胸にわき上がる想いを言葉にしないと収まらない。
綺麗にはならないけど、もう感想書いちゃいます。
ネタバレの嵐なので、そこだけは気を付けてください。


















とりあえず、です。
有り体に言ってしまうと、感動しました。
すごくいい映画だと思いました。
画面の向こうから色んな感情が
押し寄せてきて、本当に胸が一杯です。
その感情を言葉にしないと失われそうなくらい、一杯。


〈世界に自分を開く物語〉

この物語で端的に感じたことは、
「これは世界に自分を開く物語なんだ」ということです。
たぶん、作品を観た人全員が思います。

主人公の将也は、硝子をいじめていたことが原因で、
逆にクラスメイトにいじめられ、自分を世界から閉ざしてしまった。
それが、硝子との再会をきっかけに、少しずつ自分を開いていく。
自分を閉じていたことで見えていた世界は、
最後の文化祭で完全に開かれて、今までとまったく違う風景に思える。
他人の他愛のない会話、なんてことはない表情。
その聲の形に、将也は涙を流すわけです。

でも、将也の涙は独りだけのものじゃない。
この物語には将也以外にも、自分を閉ざした登場人物が数多くいる。
結弦も不登校だし、硝子の母親もそう。
私から見れば、硝子もそうだと感じます。
だけど、彼らも誰かの繋がりをきっかけに、
世界に自分を開いたことで、前に進み始めている。
将也の涙は、そんな彼らの思いが詰まったものなのでしょう。

そんなことを思うだけでこの作品ってすごいと感じるんです。
「この世界で自分は生きていてもいいんだ」って
ものすごい包容力で肯定されているようで。

「生きることを手伝ってほしい」という将也の台詞も、
うん、自分勝手なんだけれど、
相手が硝子だからこそ重みがあるんです。
それを二人で約束することは、
お互いに「生きることを手伝う」ことを
約束したのだと思うんです。

それは言い方を変えれば、
「あなたに生きていてほしい」ってことなんですよね。
生きること自体を、肯定されるって、
やっぱりすごく安心するし、嬉しいんです。
それが心の琴線に触れたんでしょう。


〈障害者が生きるということ〉

私はこの作品を「平等な作品だ」と思いました。
創作で障害を扱うこと自体、デリケートだし、
盲目の人でもほぼ見える人と変わらない能力があったりして、
ハンデキャップがハンデキャップじゃなかったりします。

でも、この作品はそんなはありません。
硝子は障害が理由でいじめられる。
小学校で最初はみんな気を遣うけれど、それに疲れる子もいる。
歳を取っても人の会話についていけないときもある。
やっぱり、できないことはできないんです。
だからこそ、逆に平等なんじゃないか、と。


私個人のお話をします。以前どこかで書いたかもしれません。

私は小さい頃、合気道に通っていて、
子どもなりに上手くて、黒帯一歩手前までいってました。
(子どもではシステム上黒帯がとれないので、実質一番上です)
そんなこともあって、
小学生なのに他の子の実演と昇級審査をするときがありました。
とはいえ、私以外にも二人審査員はいましたので、
子どもだけで判断はできませんでしたけれど。

そこで、両手共に指が無い子の実演を審査しました。
通っている曜日が違ったので、出会ったのは初めてでした。
たぶん、五歳児だったと思います。
自分が五歳のときに比べたら、落ち着きもあったし、
真面目でがんばっているのをすぐに感じました。

彼は真面目に、おおまかに見れば型どおりに実演をしました。
でも、何かが違うのです。
他の合格者に比べたら、まだ慣れない動作もある。
相手の手首をつかむ技もありましたが、当然それはできなかった。
言い方は失礼ですが、健常者だったら、私は不合格の採点をしました。
でも、私は彼に対して、合格採点をしました。
真面目だったし、型は間違っていない。
減点をする理由はない、と自分に理屈をつけて。

結果、彼は不合格でした。
私以外の二人の審査員が不合格採点をしたのでしょう。
昇級者のリストで名前を呼ばれない悔しさはあったはずです。
私も昇級できなかったときはものすごくショックだった。
でも、最後に実演者全員で礼をしたとき、
彼もきとんと礼をしていたのが衝撃でした。

そのとき、私は思ったのです。
「できないことをできない」ということがつらいことでも、
そこには正直にあるべきなのだと。
「普通にできない」ことを私が勝手に憐れんでいたんだなと。
それ以来、私の中で障害者への見方が変わりました。
「できないことはできない。できることはできる。
 助けが必要なときには、手を差し伸べる」
今でも、この考え方は変わっていません。
私もできないことは山ほどありますから。


私個人の話が長くなりましたね。

「聲の形」では硝子の耳のハンデキャップは確かにあります。
でも、登場人物はそれに対して正直です。
子どもの時には「気を遣うのが疲れる」「からかいたい」。
高校生になって、手話を使うようになっても、
彼女のことを妙に憐れんだりする人はいません。
「障害者だから持ち上げられる」ことはなかったと思います。
みんな、硝子に対して正直であること。
これが、すごく平等だな、と思いました。

そして、硝子自身も普通の女の子なんだ、と感じました。
中盤まで、どんなにひどい目に遭っても
笑って許すような、そんな表情を見せる硝子が、
とても強い女の子に見えていました。

でも、そんなことはなかった。
っていうか、再会した時点からそんなことなかったな、と
後から思い返しています。

硝子は将也に好きだという気持ちを伝え損ねて、
それでも再アタックする勇気はなかった。
自分と将也のまわりで色々なものが壊れたとき、
自分のせいだと思って自殺を図った。
もちろん、最後には壊れたものを取り戻すためにがんばるんですが、
でも、その過程には硝子なりの弱さが描かれている。

笑って許しているように見えたのは、
硝子なりに衝突を怖がって避けていただけなのでしょう。
それは障害に関係なく、誰もが持ち得る弱さで、
取り戻そうとする強さは、佐原が憧れる強さだった。
そんな意味でも、硝子の描き方は平等だな、と思いました。


〈罪の意識は、本当にシンプルなこと〉

いじめ。うん、これは本当につらい。
いじめられる方も、まわりすべてが敵に見える。
挙げ句には自分自身も敵に見える。
「自分のせいじゃないのに? いや、自分のせいなのか?」
いじめる方はほんのささいな冗談のつもりなのに、
いじめられる方は世界の見え方が歪められる。

でも、いじめる方も世界がいつ歪んでもおかしくない。
何かをきっかけにいじめられる側が消えたり、
大人にチクったりしたとき、
いじめている側が全面的に悪者扱いされ、
ものすごく大きな罪の意識を背負わされる。
いや、下手するとこの映画のように、
過去にいじめていたという事実が
いつまでも足かせになる可能性もある。

将也のやったことは、間違いなく滅茶苦茶悪いことです。
硝子が許したって、古傷としてずっと残るはずです。
でも、罪の意識の原点は、シンプルなはずなんです。

中盤、将也は過去のいじめの出来事を掘り返されて、
友だちとなったはずの人たちから孤立します。
いや、自ら友だちを突き放してしまう。
彼自身の罪の意識が、あらぬ方向で他人を傷つける。

あのシーンを見てみんな思うはずなんですよね。
「硝子に『ごめんな』の一言を伝えればいいのに」と。
(あの状況下ではおそらく不可能だったでしょうが……)
それは結局、将也の罪の意識があれこれ
こじらせていることが見えているからではないでしょうか。

川井さんの台詞ではありませんが、
元々をたどればすごくシンプルなことなんです。
硝子を傷つけたこと。それが罪の意識の元なんだと。
それと向き合わない限りは、
将也自身は罪の意識を受けとめることはできない。
つまり、世界に自分を開くことができない。

「謝罪の王様」の感想でも書きましたが、
色々こんがらがった罪の意識は、
元をたどれば本当にシンプルなことなんです。
(その大きさは別として……)

それがこんがらがっていくのは、
私が思う範囲では彼らの青春ゆえだと思います。
色々多感な時期で、恋愛だとか友情だとか、
自分が世界の中でどうとかこうとか。
それらが絡み合って罪の意識がとても重くなっていく。
それこそが青春時代の出来事だと思います。
そして、元はシンプルなことなんだと気づくのが、
彼らの成長なのではないかと思うのです。



なんだかすごい分量を書いていますね。
普段、小説を書いている倍以上のスピードで書いている……。
うん、とにかく私にこんなエネルギーをもたらすほどすごい映画でした。
好きです、この映画。
誰か、こんな感じで語り合おうじゃないか……!

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プロフィール

蛮天丸

Author:蛮天丸
物書き。
東方プロジェクトの二次創作小説を中心に、
好きなものを好きなように書いています。
最近は秘封がお好き。
秘封処女膜合同の主犯(siroito.web.fc2.com/maidenhead/)だけど、処女じゃないよ!
アイコンは一条さんからお借りしました。

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