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徒然読書録 『向日葵の咲かない夏』 ~冷静な狂気

狂った人は怖い――と思うかもしれません。
私は本当に狂人と出会ったことはありませんが、
「あ、普通じゃないな」と感じる人は見たことはあります。
そうした人たちと私は違うと、勝手に思い込んでいました。

この本を読み終えるまでは。



※ここからはネタバレを含みます!





大まかなストーリーとしては、
主人公のミチオが偶然にもクラスメイトのS君の
自殺後の遺体を見つけてしまい、
その後消えてしまう死体の謎を追う――という、
サスペンス、ミステリーです。

そうした小説にはよくあるように、
このミステリーもどんでん返しの連続です。
しかし、この小説の本当のどんでん返しは、
事件とは直接関わりのないところで待っていました。

謎を追うときに一緒にいてくれるミチオの妹、ミカ。
行き詰まったときにアドバイスをくれるトコお婆さん。
そして、ミチオの憧れのクラスメイト、スミダさん。
この小説の中では生き生きと振る舞い、
ミチオの背中を後押ししてくれる人たちでした。

でも、その世界が最後のある人物の言葉で
がらがらと音を立てて崩壊してしまいます。

「どうしてトカゲに(話しかけているんだ)――」
「(妹の)ミカをトカゲなんて呼ばせない」

人間ではなかったというのに、ただただ驚きでした。
全部、ミチオが自分で作り出した妄想だったのです。

この本を読んでいる間は、全然そんなことを考えなかった。
死んでしまったS君が、蜘蛛として再生していたので、
そうしたことが他にもあるかもしれない、と疑いすらしなかった。
つまり、私はミチオの世界に呑み込まれていました。

でも、そのやりとりで世界の枠が壊れたとき。
主人公で語り部であるはずのミチオ自身が狂った存在だと知る。
そのとき、私は二つの恐怖を感じました。

ひとつは狂ったミチオを恐ろしいと思う気持ち。
もうひとつは、理路整然と狂気の行為が描かれていたということ。
私は後者の方がずっと怖い。

狂ったことが怖いのは、
その思考回路が理解できないからだ、と私は思います。
綺麗な花を見かけていきなり踏みつける人の思考を、
とうてい理解できず、怖いと思う。

でも、「狂った」中を覗くと、
そこには違った原理の思考回路がある。
それがこの小説のミチオの世界だった。
彼の場合は、思考を組み立てる方法ではなく、
そもそもの思考パーツが「普通」の人と違うのです。
ミカが人間であれば、まったく「普通」だったはずなのに。

一見、何を考えているのかわからないと思うばかりに、
私たちは狂ったものごとを怖がる。
だけど、その思考方法が「狂った」ものごとと同じなら、
どうして自分が「狂ってない」と断定できるだろう?

この小説はそうした疑問を提示するためだけに、
最後の10%以外をミステリーにしたのだとさえ思います。

ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだときにも、
『東京マグニチュード8.0』を観たときにも、
自分の世界がまわりとギャップがある描き方をされていましたが、
この小説はより直接的に狂気を表しているように感じました。

さて、あなたが狂ってないと、どうやって言えますか?

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プロフィール

蛮天丸

Author:蛮天丸
物書き。
東方プロジェクトの二次創作小説を中心に、
好きなものを好きなように書いています。
最近は秘封がお好き。
秘封処女膜合同の主犯(siroito.web.fc2.com/maidenhead/)だけど、処女じゃないよ!
アイコンは一条さんからお借りしました。

ジャンル

東方 読書録 映画録 漫画録 ゲーム録 アニメ録 ドラマ録 艦これ 

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