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徒然映画録 『謝罪の王様』 ~コメディなのに、さくっと記憶を刺す

謝るのが好きな人ってそんなにいませんよね。
私も仕事柄、謝ることが多いのですが、
やっぱり謝罪は好きじゃありません。
どことはなく、自分を自分で貶めている感覚がしてしまいます。

でも、この映画の中には謝罪が大好きな人がいます。
2年前に公開された映画、『謝罪の王様』の主人公です。







冒頭から暴走気味、というか本当に冒頭から車が暴走するこの映画ですが、
「謝罪」という重めなテーマを扱いながら、
コミカルにテーマの核心を突く、とてもバランスがとれた映画でした。
そして、職業柄謝ることの多い私が、深く共感してしまったのです。

なんといってもこの映画はコミカルですが、
登場人物である依頼人たちみんなぶっ飛んでいます。
お金や世間体や、はたまた国まで背負って謝罪しなければいけないのに、
「一般的な」私たちとの感覚がずれ……ずれすぎてネジ外れました。
謝罪会見で、ふにゃぁ~んと脱力して謝るシーンは爆笑ものです。

こんなしょうもない依頼人たちに、
主人公の「東京謝罪センター所長」の黒島が、鋭く的確にツッコむ。
ぶっ飛んだ依頼人と黒島のやりとりは漫才を見ているようで、
彼らのボケに拍車をかけていきます。

でも、彼らが抱えている罪悪感と感情は、
そのコミカルさとは裏腹に「一般的な」私たち以上にリアルなものでした。
その感じは観ている人のどこかにすっと刺さるのではないでしょうか。

私が深く共感したのは、倉持助手の父親のケースです。

・・・・・・・・・・・・・・・

弁護士試験のため、日々自分を追い込むように勉強する彼に対し、
娘がちょっとヘンなポーズをお父さんに毎日見せてくる。
最初は可愛らしいけれど、だんだんとうっとうしく感じるようになる。
そして、弁護士試験当日のドタバタの最中、
そのポーズをした娘に対して手をあげてしまった。
「お父さんは悪くない」と黒島もいうものの、
彼は父親として手をあげたことに罪悪感を抱えたまま、
十数年が経過してしまった……。

・・・・・・・・・・・・・・・

私も子どものとき、なぜ怒られるのかわからないまま、
手をあげられたことがあります。
今となっては私自身、どうとも思っていませんが、
ひょっとしたら、私の両親は心のどこかで罪悪感を抱えているのかも。
そんなことを思うと、倉持助手の父親に同情を禁じ得ませんでした。

また、主人公の黒島が「東京謝罪センター所長」を始めたきっかけも、
ラーメン屋で麺の湯切りの熱い汁が頬にかかったというだけでした。
「すみません」とただ一言あればよかったのに、
その店員からその一言が出ず、代わりの人たちがどんどん来て、
やがて話がヘンな方向にこじれていく……。

「許したいから、ごめんなさいの一言が聞きたいだけなのに」

謝罪をしたいという意識の根源と、謝罪される側の意識の根源。
コミカルな中でも、不意を突くような心理描写が、
観る人たちの共感を誘うのだと思います。

たとえ出来事やストーリーがぶっ飛んでいても、
根本で彼らが抱えている感情が、観る人の経験と結びつくとき、
一気に物語世界へ引き込まれていくのでしょう。
それが非常に素晴らしいところでした。

蛇足にはなりますが、ストーリー構成も面白かったです。
この映画ではいくつかのケースが連作のように描かれますが、
実はあるケースの側面や裏側で、別のケースが並行して進んでいる
……というのが後半にどんどん明かされます。
前半、黒島が遅刻して依頼人の元に来たように見えるのですが、
実は別のケースの依頼人と話していたから遅れた……と後半で明かされるように。

種明かしをしてしまうと、カメラアングルの演出でした。
小説でいえば叙述トリックに近いでしょうか。
画面に描かれないことを、私たちは「起きていない」と思うけれど、
死角で出来事が同時に進んでいた、ということです。

手法としてはありがちでしょうが、実際に組み込むのは難しいものです。
それを映画というメディアで、カメラの特性を使いこなして、
そうした技法を演出した。これは非常に面白かったです。

とにかく、思った以上に面白い映画でした
ギャグもテンポも非常によく、観ていてまったく飽きませんでした。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉がぴったりです。

……褒め言葉なのかどうかわからないな。

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プロフィール

蛮天丸

Author:蛮天丸
物書き。
東方プロジェクトの二次創作小説を中心に、
好きなものを好きなように書いています。
最近は秘封がお好き。
秘封処女膜合同の主犯(siroito.web.fc2.com/maidenhead/)だけど、処女じゃないよ!
アイコンは一条さんからお借りしました。

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