セックスレス寄稿合同 『毒と一つになること』~裏話
だいぶ遅くなりましたが、京都秘封お疲れ様でした!

今回のイベントで、私は二つの本に関わりました。
・秘封セックスレス合同 『セックスばっかりしやがって』
・メリーのおっぱい本 『ヴォイジャーの羊』
今回は、セックスレス合同に寄稿した『毒とひとつになること』について、ぼちぼち書いていきましょう。

★特設サイトはこちらから
大きなネタバレになるので、読み終わってそういうネタバレが気にならなければ、どうぞ。
◆
セックスレスというテーマをやろうと思ったのは、
ちょうど一年前の京都秘封のイベント中でした。
スペースを歩いていると、蓮子とメリーのエロ本ばっかり。
(そんな自分もその前の年にR18本を出していましたけど)
「そりゃ秘封の二人だってセックスはするさ……。
でも、こんなにセックスばっかりなのか?
セックスばっかりやっていれば、いつかはセックスレスだって来るはずだ!」
そんな思いに急に囚われ、主催のかいゆさんに声をかけたことが事の始まりでした。
セックスのアンチテーゼを投げたかったんです。
と、単なる思いつきをかっこ良く言ってみました。
そして、無事に(?)企画が立ち上がったのですが、
そのときは私はどういうお話を書こうか、何のイメージもありませんでした。
だから、シンプルに、考えてみたのです。
「ひとつになるのは、そんなにいいこと?」
以前に比べて、セックスの概念がそう恥ずかしくない時代。
恋の行き着く先として、セックスは至高であるかのように語られるときもある。
もちろん、決して悪でもなく、自然の流れとしてそんな「現象」は起こります。
でも、二人の関係はセックスで終わることはありません。
裸でお互いの感じる部分を触って、それは汚い部分も知るということです。
現実には、セックスがいかず、すれ違うカップルだってたくさんいる。
それでも、二人でいるって、どういうことだろう。
むしろ「セックスしないことを選びとる」お話があってもいいじゃないか。
そんなところから私のお話作りは始まりました。
余談ですが、最初はもなつさんの『Less』のようなお話を書こうかと思っていました。
結局、その路線で行かなくてよかったです。(危なかった)
◆
そんなこんなで、シンプルに「ひとつになることは、相手の毒をも喰らうこと」を軸にしました。
だから、あんなタイトルになっています。(〆切過ぎてからつけましたが……)
物理的に本当に二人がひとつになって、それで色々と嫌な思いをして……
それでも、二人はお互いを認めてほしい、という願いを込めたお話です。
お話を書く上で難しかったのは「ひとつになること」をどう表現するかについてでした。
映画や漫画と異なり、並行した思考を走らせるのが小説では表現しづらいですから。
そこで参考にしたのは『うみのもり』に収録した『Drowning』の感想でした。
夢現の境界が曖昧でふわふわしている、という声があったことを思い出したのです。
夢のように、不可思議な世界をたどってもらいたい。
でも、描きたいのはあくまでえげつない現実なのだから、文体は少し固めに。
三人称を使って、文の語り手と動作の主体を切り離す。
誰が何をしているのか、混乱するくらいで――。
実際、調整には苦労しましたが、個人的には結構好きな雰囲気になりました。
誰が何をしているのか、あのお話では正確につかむ必要はありません。
ただ、セックスをしているときの倒錯感が伝われば嬉しいです。
◆

ゆずきさんのイラストについて、実は私はほとんど指定しませんでした。
というより、指定できなかったのですね。
お話自体は狙い通りだったのですが、
「これ、イラストにできるわけないじゃん!」。
なんだってあんな話を書いてしまったのだろうと、後悔すらしていました。
でも、いざゆずきさんにお願いしたら、これがびっくりです!
ワンルームに散乱する毒ガジェット。
ベタ塗りもない、淡白な線での表現。
二人が物理的にひとつになることの気持ち悪さも表す、あの腕。
イラストを見た時点で一発オッケーでした。
〆切もあり、そこで修正する時間もなかったのですが、
イベントが終わった今でも、あのイラストで良かったなあと納得しています。
ゆずきさん、あらためてありがとうございました!
◆
ホームでのラストの描写は、図らずもエヴァに似ているな、と個人的には思います。
やっぱり、他人とひとつになること、他人との境界を分かつこと。
そこを考えると、エヴァンゲリオンの旧劇場版に辿り着いてしまいます。
シンジくんが選びとった結論は、人を愛することにも通じると思うのです。
二人がお互いを分かつことは、それはそれで幸せなのだと。
だから、セックスレスを選ぶのも、幸せのひとつの形なのだと。
そんなことを、あの話でちょっとでも感じてくれれば、作者冥利に尽きますね。

今回のイベントで、私は二つの本に関わりました。
・秘封セックスレス合同 『セックスばっかりしやがって』
・メリーのおっぱい本 『ヴォイジャーの羊』
今回は、セックスレス合同に寄稿した『毒とひとつになること』について、ぼちぼち書いていきましょう。

★特設サイトはこちらから
大きなネタバレになるので、読み終わってそういうネタバレが気にならなければ、どうぞ。
◆
セックスレスというテーマをやろうと思ったのは、
ちょうど一年前の京都秘封のイベント中でした。
スペースを歩いていると、蓮子とメリーのエロ本ばっかり。
(そんな自分もその前の年にR18本を出していましたけど)
「そりゃ秘封の二人だってセックスはするさ……。
でも、こんなにセックスばっかりなのか?
セックスばっかりやっていれば、いつかはセックスレスだって来るはずだ!」
そんな思いに急に囚われ、主催のかいゆさんに声をかけたことが事の始まりでした。
セックスのアンチテーゼを投げたかったんです。
と、単なる思いつきをかっこ良く言ってみました。
そして、無事に(?)企画が立ち上がったのですが、
そのときは私はどういうお話を書こうか、何のイメージもありませんでした。
だから、シンプルに、考えてみたのです。
「ひとつになるのは、そんなにいいこと?」
以前に比べて、セックスの概念がそう恥ずかしくない時代。
恋の行き着く先として、セックスは至高であるかのように語られるときもある。
もちろん、決して悪でもなく、自然の流れとしてそんな「現象」は起こります。
でも、二人の関係はセックスで終わることはありません。
裸でお互いの感じる部分を触って、それは汚い部分も知るということです。
現実には、セックスがいかず、すれ違うカップルだってたくさんいる。
それでも、二人でいるって、どういうことだろう。
むしろ「セックスしないことを選びとる」お話があってもいいじゃないか。
そんなところから私のお話作りは始まりました。
余談ですが、最初はもなつさんの『Less』のようなお話を書こうかと思っていました。
結局、その路線で行かなくてよかったです。(危なかった)
◆
そんなこんなで、シンプルに「ひとつになることは、相手の毒をも喰らうこと」を軸にしました。
だから、あんなタイトルになっています。(〆切過ぎてからつけましたが……)
物理的に本当に二人がひとつになって、それで色々と嫌な思いをして……
それでも、二人はお互いを認めてほしい、という願いを込めたお話です。
お話を書く上で難しかったのは「ひとつになること」をどう表現するかについてでした。
映画や漫画と異なり、並行した思考を走らせるのが小説では表現しづらいですから。
そこで参考にしたのは『うみのもり』に収録した『Drowning』の感想でした。
夢現の境界が曖昧でふわふわしている、という声があったことを思い出したのです。
夢のように、不可思議な世界をたどってもらいたい。
でも、描きたいのはあくまでえげつない現実なのだから、文体は少し固めに。
三人称を使って、文の語り手と動作の主体を切り離す。
誰が何をしているのか、混乱するくらいで――。
実際、調整には苦労しましたが、個人的には結構好きな雰囲気になりました。
誰が何をしているのか、あのお話では正確につかむ必要はありません。
ただ、セックスをしているときの倒錯感が伝われば嬉しいです。
◆

ゆずきさんのイラストについて、実は私はほとんど指定しませんでした。
というより、指定できなかったのですね。
お話自体は狙い通りだったのですが、
「これ、イラストにできるわけないじゃん!」。
なんだってあんな話を書いてしまったのだろうと、後悔すらしていました。
でも、いざゆずきさんにお願いしたら、これがびっくりです!
ワンルームに散乱する毒ガジェット。
ベタ塗りもない、淡白な線での表現。
二人が物理的にひとつになることの気持ち悪さも表す、あの腕。
イラストを見た時点で一発オッケーでした。
〆切もあり、そこで修正する時間もなかったのですが、
イベントが終わった今でも、あのイラストで良かったなあと納得しています。
ゆずきさん、あらためてありがとうございました!
◆
ホームでのラストの描写は、図らずもエヴァに似ているな、と個人的には思います。
やっぱり、他人とひとつになること、他人との境界を分かつこと。
そこを考えると、エヴァンゲリオンの旧劇場版に辿り着いてしまいます。
シンジくんが選びとった結論は、人を愛することにも通じると思うのです。
二人がお互いを分かつことは、それはそれで幸せなのだと。
だから、セックスレスを選ぶのも、幸せのひとつの形なのだと。
そんなことを、あの話でちょっとでも感じてくれれば、作者冥利に尽きますね。